東京高等裁判所 昭和26年(う)3573号 判決
弁護人の控訴理由は、末尾に添付する別紙の控訴趣意書と題する書面に記載するとおりである。
ところで原判決を看るに、判示第一の事実に対する証拠として昭和二十六年三月二日附検察官作成にかかる被告人供述調書と共に同日附司法警察員の事件送致書を挙示しあることは、まことに論旨第二点において指摘するとおりであり、しかも、記録を調べてみると該事件送致書について証拠調を履践した跡を見出すことのできないことも、同論旨中において指摘するとおりである。してみれば、原判決は採証の法則に違背した廉あるものといわなくてはならない。原審が適式に証拠調をした前記供述調書中に、検察官が右事件送致書記載の犯罪事実を被告人に読み聞けたところ、被告人においてそのとおり盜みましたと答えた旨の供述記載があるからと云つて、全く右供述調書と別個の書類たる該事件送致書を以て右供述調書の一部を成すものと見ることは、とうてい許されない。そこで、右供述調書につき証拠調をしたことを以て、併せて該事件送致書についても証拠調をしたものと看做すことはできない。かようなわけで、原判決に斯の採証法則の違背ある以上、この違背は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決はこれを破棄しなければならない。